トップカイザーサウンドオーディオクリニックの旅マトリックス801-Vとケーブル三昧

マトリックス801-Vとケーブル三昧



 Y.T様は我が東京試聴室にお越し頂いたのを機に私の出す音をお気に召して下さったのでしょうか、一度クリニックにお伺いさせて頂くことになりました。特にナイアガラの試聴を希望されました。


 澄んだ空気に囲まれた恵まれた環境


 川崎市の麻生区にはまだ山の緑がふんだんに残っていて、夏にはカブトムシも飛んで来るそうです。今日のように天気の良い日には、南の窓からはわずかですが富士山の頂が見えるのを教えてくれました。すぐ目の前にも小高い丘が広がっていて、広々とした青い空と相まって窓枠の中はまるで絵画の世界のようです。

 お住まいは一応マンションの7階と言う事なのですが、山の傾斜面に建っている関係上7階がそのマンション全体のエントランスになっていて、利用こそする必要はありませんでしたが、エレベーターも下り専門という何とも珍しいものです。

 普通ですと4階以上になると何かしら不自然な違和感を覚えるのですが、まるで平屋にいるような足が地に付いた安定感であり安心感です。こうした環境ですと良い音が出てくれそうな予感がします。


 広いリビングの中央にオーディオシステムが置かれていましたが、一番最初に目に入ってきたのが蛇のように太いケーブル達です。ローゼンクランツのケーブルもいい加減太いのですが、P.A.D、NBS、シナジスティックリサーチ、アナコンダと一本取られたと言うぐらい立派な物ばかりです。


 二律背反した音


 久しぶりに聴く801-Vは気品と潤いがあって、何とも言えない芳醇な音で鳴っていました。特に「伝送系」は申し分ないくらい質の高い音です。しかし、何とも経験した事のないような二つの音が同居した音として私の耳には聞こえてくるのです。

 それは、私だからこそ感じ取れたのかもしれませんが、「振動系」が悪さをしている音がもう一方でハッキリとした形で耳に認識出来てしまうのです。その事をTさんに述べますと、案の定かといった表情をされました。


 原点に立ち返る意味からも”素の音”を提案


 特にスピーカーのアンカーベースのスパイクと鉄製のスパイク受けとの間で生じるストレス、また、ラックの棚板とボードとスペーサーとインシュレーターの4者が複雑な振動の迷走を引き起こしているようです。


 「何がどうしてこのような音になっているのか判断がつかないので、

 一旦アクセサリーの全てを外して、

 スピーカーと各コンポだけの”素の音”を聴いてみる事にしませんか?」

 と言う提案をさせて頂きました。


 実際に出てきた音は?


 ご覧のように「ボード」、「端末アクセサリー」、「インシュレーター」、「スーパーツイーター」と外した物はけたたましいほどの量です。これだけの物が良くも悪くも影響しあっていたのかと思うと、アクセサリーとの付き合い方には考えさせられるものがあります。


 当然のごとく、外して初めて出た音を聴くにつけ、

 ご本人の口から出てきた言葉が、

 『どうやら無くても良さそうですね!』でした。


 PB-JRU(H)の音には”ビックリ!”


 スピーカースタンドのスパイク受けにPB-JRU(H)を入れた時に、Tさんはその能力に一番驚かれたそうです。今までスピーカーから出た音楽振動が反発して、、ほとんどスピーカーの方に逆流してくる形でスピーカーの音を濁していた事が判明したからです。



 珍しくスピーカーが理想のポジションに設置


 何通りもの位置で微調整を試みましたが、その結果見事だったのは、スピーカーの置かれているポジションがほとんど理想の場所にあった事です。この事が初めの印象として芳醇な音を感じた第一の理由でした。



 Pin-5EXの実力


 鈍重と言われている801-Vのウーハーユニットから乾いて張った音が出てきたのには、Pin-5EXの製作者本人である私もビックリしました。これだけのケーブル三昧を経験しておられるTさんもハッキリと認めざるを得なかったわけですから、その実力は世界でも超一級でしょう。



 ナイアガラの試聴


 ナイアガラの効果も相当ハッキリと出ました。それは各コンポにつながれているACケーブル達の性能が半端ではなく良かったからに他ありません。特にフルオーケストラをかけた時にその実力が遺憾なく発揮され、音数が圧倒的に増えた上に各楽器の音色が手に取るように聞こえ始めた事です。


 波状攻撃のように管楽器が重ねて次々と炸裂する時などは、正に圧巻としか言いようがないほどの迫力でした。今鳴っている音を聴けば、誰もが現行の801ノーチラスより音楽的に優れていると思うのではないでしょうか?。それぐらいヒューマンで魅力ある音なのです。


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